言わずもがな、歯車が噛んでいない状態のことです。自動車でギアをニュートラルにすると動きません。私たちの身体が「ニュートラルになる」というのは、社会の歯車としての仕事から解放された状態、と言えるでしょう。
「サピエンス全史」の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏によると、人類はおよそ1万2千年前の農業革命以降、分業化された生活を送るようになりました。長い間、狩猟採取生活を送っていた我々の祖先は、生活に必要なあらゆることを全て自分たち自身の手で行ってきました。それが農業革命以降、仕事の専門化が起こり、コメを作る人、家を作る人、服を作る人、村や国を治める人、などそれぞれの動きが固定化されていきます。
つまり社会の歯車として分担された仕事を担うようになりました。人間の身体は適応能力の高いので、特定の仕事を毎日こなすと、筋肉や骨は、その作業を行いやすいように変化していきます。前に屈む姿勢が多ければ、屈む姿勢をキープする筋肉が発達します。背骨にかかる負荷を減らすべく、筋肉は硬直化し、背骨を支えるようになります。
しかし、それにはデメリットもあります。背骨を支えるために硬直化した腰の筋肉は、血液やリンパなどの流れを阻むようになります。ガチガチに固まることで文字通り、融通が効かなくなります。身体を助けるための硬直化した筋肉が、今度は逆に身体の流れをせき止めてしまう。ジブリ映画でありそうな展開ですね。
そんな硬直化した部位をそのままにしておくと病気の元になってしまいます。そうなる前に身体を「流れる状態」に戻すことが必要です。分業のため硬化した身体を一旦、ニュートラルにすること。音楽に合わせて、思いのままに踊る様な身体の動きを取り戻すこと。
たとえ短い時間でも、身体をリセットすることは大事です。それを意識することは、健康でいるためにとても重要だと私は考えています。それが私たちの時代のバランス感覚なのかもしれません。